不動産管理とは、マンションやアパート、テナントビルなど賃貸物件の管理を行う仕事のことです。

管理と一口に言っても、業務内容は多岐に渡ります。
不動産のオーナーや入居者対応、契約書の作成、空き室募集、設備機器のメンテナンスなど幅が広く、業界での経験がない人は具体的なイメージがつきにくいのではないでしょうか。

不動産管理職へ転職をしたいと思っても、仕事内容や必要とされる能力などがわからなければ不安が大きく、どのような転職活動をしていけばいいのか判断がつきません。

そこで今回は、不動産管理職へ転職を考えている人へ向けて、仕事内容や転職に向いている人について解説します。

1.不動産管理の仕事内容と必要とされる能力

不動産管理とは何を行うのか、具体的な仕事内容と、転職するために必要とされる能力を以下にまとめます。


仕事内容は大きく分けて2つ
不動産管理には、「プロパティマネジメント業務」と「ビルメンテナンス業務」の大きく分けて2つの業務があります。

 

【プロパティマネジメント業務】

プロパティマネジメントとは、アパートやマンションの入居者、オフィスビルや商業ビルに入居しているテナントの契約管理など、不動産のソフト面における管理業務のことです。

主な業務としては、以下の通りです。
・賃貸借契約書の締結、書類管理
・テナント誘致のためのリーシング業務
・入居者からのクレーム対応
・家賃の回収、入金管理。
・不動産オーナーとの折衝

業務の多くが人と接する必要性のあるもので、不動産の知識だけでなく、コミュニケーション能力が重視されます。

特に入居者からのクレームについては、適切に対応できなかった場合、入居者の信頼を失い、最悪の場合は解約につながってしまいます。

賃貸経営をしていくうえで、入居者が減少すれば不動産全体の収益にも影響しますので、もっとも重要なポイントといえるしょう。

 

【ビルメンテナンス業務】

ビルメンテナンスとは、ビルやマンションの清掃や設備点検、原状回復工事など不動産のハード面における管理業務のことです。

主な業務としては、以下の通りです。
・建物の美観維持、衛生管理のための清掃
・電気、消防、空調設備などの設備機器の保守点検
・大規模修繕の計画作成、修繕計画表の取りまとめ
・退去後の貸室の原状回復工事
・不動産資産価値向上のためのリニューアル提案

これらの業務をこなしていくうえでは、建築基準法、消防法などの法律知識、建物の構造や設備に関する知識が必要です。

もちろん、すべてを完全に把握しておく必要はありませんが、設備機器のトラブルがあった際などに、何が原因で、どんな業者へ対応を依頼し、入居者に対しどのように説明すればよいのか、といった対応が素早くできなければなりません。

なおビルメンテナンス業務においても、各業者間での調整、作業の段取りなどをしていくうえで、一定のコミュニケーション能力は必要とされます。

 

2.不動産管理職へ転職するにはどんな能力が必要か

不動産管理には、入居者の賃貸借契約管理、建物の設備管理の知識などが求められますが、もっとも重要なのはコミュニケーション力と忍耐力です。

アパートやマンションの入居者やビルのテナントへの対応、さらに不動産のオーナー対応など、基本的に人を相手にする仕事であるため、高いコミュニケーション能力が要求されるからです。

また、不動産の維持管理業務や工事業務に関しては、不動産管理会社から各専門業者へ業務を委託しているケースが多く、様々な専門業者と打合せなどを行う機会も多くなります。

時にはマンションの入居者から理不尽なクレームを受けたり、入居者やオーナーといった顧客の要望と委託業者の考えが合致せず両者の間で板挟みになったり、苦労する場面もあるかもしれません。

したがって、不動産管理職には入居者やオーナーの要望に応じるための高いコミュニケーション力、さらに様々なクレーム対応に応じられる忍耐力が備わっていることが求められます。

 

3.取得していると有利な資格

不動産管理職に転職する際、所得していると有利な資格を紹介します。

 

【宅地建物取引士】

不動産管理職に限らず、不動産に関わるすべて仕事で重宝される資格です。
宅地建物取引士には不動産売買、交換または賃借における重要事項の説明、重要事項説明書面の記名・押印、賃貸借契約書の記名・押印などの専権業務が与えられています。

また事務所の場合、業務に従事する者5人に対して1人の割合で設置が義務付けられており、資格者が足りないと業務を行えなくなってしまうため、不動産会社としては一人でも多く確保しておきたい人材です。

 

【管理業務主任者】

マンションの委託契約に関する重要事項説明や管理事務の報告を行う知識を有していることを証明する資格です。

マンション管理会社は、事務所ごとに一定数の成年者である専任の管理業務主任者を設置する義務があります。

宅地建物取引士が不動産売買、仲介に必要とされる資格であるのに対し、管理業務主任者はマンションを中心とした不動産管理に特化した資格ですので、不動産管理職にとって大変重要な資格です。

 

【マンション管理士】

マンション管理組合のコンサルタントに必要とされる専門知識を有していることを証明する資格です。

この資格を所持していると、マンションの管理者や区分所有者に対し、維持管理や大規模修繕工事などに関するコンサルティング業務が行えます。

不動産オーナーやマンション管理組合に対して、修繕工事などの話をする際などに説得力のある説明ができるため、不動産管理職として取得しておきたい資格です。
ただし、資格試験の合格率は7~9%と低く、国家資格の中でも難関試験に入ります。

 

【賃貸不動産経営管理士】

賃貸不動産管理に必要な知識を有していることを証明する資格です。
不動産取引、賃貸、管理すべての業務と関連規制法の知識が必要とされる資格ですので、不動産管理職の業務とも関わりが深いです。

また、賃貸住宅管理業者登録制度に登録をしている業者は、事務所ごとに賃貸不動産経営管理士(もしくは管理事務に関し6年以上の実務経験者)を設置する義務があるため、所持しているだけでも価値のある資格です。

 

4.不動産管理への転職が向いている人とは

次に具体的に不動産管理への転職が向いているのはどんな人か、3つ紹介します。


不動産営業を経験している人

不動産売買、仲介など、営業として不動産取引を経験した人であれば、すでに不動産の知識が備わっていますので、業務内容も理解しやすく、転職に向いているといえます。

ただし、不動産管理職は売買や仲介のように不動産を売り込むほうではなく、守っていくほうの立場です。

飛び込み営業のような仕事はほとんどありませんが、不動産の入居者、オーナーなどとは長期間に渡ってしっかりとした信頼関係を築いていく必要があります。

入居者から寄せられる要望などに一つ一つ応じていく、きめ細かな対応が求められ、売買や仲介を行うときとは違った能力が求められますので、注意しましょう。

 

ビルメンテナンス業を経験している人

ビルの設備点検や清掃など、メンテナンス業務を経験している人は、不動産管理職の業務である維持管理に精通しているため転職しやすいでしょう。

しかし、ビルメンテナンス業で働いてきた人は、不動産の契約管理、リーシング業務、入居者対応のようなプロパティマネジメントに関わる仕事は知識が不足している場合が多いです。

また、不動産管理職ではエンドユーザーである不動産の入居者やオーナーと折衝する場面が多いのに対し、ビルメンテナンス業では直接的に顧客と接する機会は少なく、コミュニケーション力については、さらに高いレベルを目指す必要があります。

そのため、ビルメンテナンス業の経験があるのみでは不動産管理職のすべての業務に対応するのは難しく、プラスアルファで高いコミュニケーション力と、契約上の知識を身につける意欲を持っていることが求められます。

 

未経験でもコミュニケーション能力が高い人

不動産に関係する仕事がまったくの未経験であっても、コミュニケーション能力に自信がある人なら、不動産管理職に転職することは可能です。

前項でも述べた通り、不動産管理職は人を相手にする仕事ですので、コミュニケーションが苦手な人には向いていません。

たとえ不動産の契約管理、メンテナンスの知識があっても、入居者やオーナーとの折衝ができなければ不動産管理職の仕事は務まりません。

逆に不動産と関係のない仕事をしてきた人でも、営業や接客業の経験がある人や、人と接するのが得意な人であれば、務まる可能性は十分にあります。

もちろん専門知識は身につけていく必要がありますので、常に勉強する意欲を持って臨みましょう。

 

5.不動産管理は守りの営業!


不動産管理における営業は、お客様に何らかの商品を売り込むタイプではなく、不動産の管理を適切に行い、入居者やオーナーが満足できる環境を維持、改善をすることで、不動産の資産価値向上に貢献する仕事です。

営業のスタンスとして、わかりやすく例えるならば、攻めの営業ではなく「守りの営業」というべきでしょう。

もちろん決して受け身で良いという意味ではなく、入居者やオーナーの信頼構築のために積極的に働きかけていく必要があります。

以上の内容を踏まえて、不動産管理の仕事へ興味が湧いた人は、ぜひ転職を検討してみてください。