不動産デベロッパーへの転職は難易度が高いと言われていますが、何が魅力なのでしょうか?
実際に数年間、マンションデベロッパーで勤務経験のある筆者が、体験談を交えながら転職事情について紹介します。
結論としては、大手マンションデベロッパーへの転職はかなり難易度が高く、一年に1名も入ってこないことも多いです。
年収などの勤務条件が良く、いわゆる「ホワイト企業」と呼ばれるため、人気度・競争度が高い業界になっています。
以下、より詳細にマンションデベロッパー業界の転職事情について解説していきます。
1.マンションデベロッパーとは?
マンションデベロッパーとは、文字通りマンションを開発・販売する企業。
人口の集中している街では、駅前に大型タワーマンションがたくさん建築されていますよね?
タワーマンションの土地を仕入れ、どんなマンションにするかゼネコンと協議し、モデルルームを作り、集客の広告を出し、実際にお客様に営業する。
その全てが、マンションデベロッパーの仕事です。
大手のマンションデベロッパーの代表的な企業は、以下の通り。
• 三井不動産レジデンシャル
• 三菱地所レジデンス
• 住友不動産
• 野村不動産
• 東京建物
• 東急不動産
知名度の高い企業が多いですね。
三井と三菱は、親会社として三井不動産、三菱地所があり、その住宅部門が別会社として切り離されています。
その他、「総合デベロッパー」と呼ばれる企業も含まれていますが、それぞれ「住宅部門」に転職することで大規模なマンション開発に携わることができます。
1-1.マンション専業デベロッパーもある
マンション専業のデベロッパーの代表的な企業は、以下の通り。
• 大京
• ゴールドクレスト
• タカラレーベン
転職市場での知名度は高くないかもしれませんが、街中には大京の「ライオンズマンション」シリーズがたくさん建っている地域もあります。
1-2.デベロッパーとゼネコンの違い
デベロッパーは、開発主体であり、プロジェクトの指揮者です。
ゼネコンは、デベロッパーから設計・建築を請け負って、実際に工事を進める企業となります。
つまり、デベロッパーからゼネコンに、工事を「発注する」という立場の違いがあります。
タワーマンションなどの大規模プロジェクトの場合、複数のゼネコンから設計案が提出され、コンペを行うことも多いです。
街の価値を最大化する魅力的な(売れそうな)マンションの設計図を提出したゼネコンが工事を請け負い、着工に進んでいきます。
建築が進むと、デベロッパーの開発社員とゼネコンの現場管理者が共同で、工事の進捗状況や品質を管理し、両社の関係は建築完了・販売完了まで続きます。
1-3.マンションデベロッパーの年収・待遇は?
マンションデベロッパーは、基本的に年収が高いです。
先ほど紹介した大手デベロッパーに勤務すると、40代で年収1,000万円に達することも珍しくありません。
福利厚生も手厚く、労働環境も悪くありませんので、いわゆる「ホワイト企業」に数えられるでしょう。
ただし、マンションの営業・販売にはどうしてもノルマがつきものです。
目標達成のためには仕方のない制度ですが、大手ではインセンティブ報酬の割合が低くなっており、必ずしも営業成績のみで年収が判断されることはありません。
高い基本給の上に、特に成績が優秀だった人は「賞与(ボーナス)」が多くなる仕組みです。
2.マンションデベロッパー元社員の体験談
上記、大手マンションデベロッパーに勤務していた経験がありますが、待遇は本当に良いです。
年収は新卒入社でも400万円を越え、数年で600万円にもなります。
40代で年収1,000万円になるのは一般的で、中には複数のマンションを購入して不動産投資をしている社員もいます。
用地部門と開発部門は、土日休み。
営業部門だと、火水休み。
繁忙期は休日出勤もあり、深夜までの勤務もあります。
不動産業界は激務だと言われるのも否定はできませんが、いわゆる「サービス残業」はありません。
残業代も休日出勤手当も支給され、有給取得も可能です。
3.大手マンションデベロッパーの転職は難易度が高い
地図に残る仕事ができて、年収や待遇も良いということで、大手マンションデベロッパーへの就職は人気が高いです。
ただ、人気高い割に正社員の人数は少ないため、転職の難易度はかなり高くなってきます。
多くの企業が新卒採用から育成するシステムが構築されており、離職率は低く、
そのため、中途入社のチャンスはほとんどないと言っても過言ではありません。
(※そもそも募集していない)
そんな中、大手マンションデベロッパーに転職してくる人には、どんな人が多いでしょうか?
3-1.不動産業界で実績がある人は転職の可能性あり
マンションデベロッパーへの転職は、基本的に不動産業界での勤務実績がある人が多いです。
特に、不動産の営業能力が高い人であれば、採用される可能性があります。
いわゆる「ヘッドハンティング」に近いものがあり、大量に中途採用希望者を募集してから先行するようなプロセスはあまり一般的ではないのが実情。
当然ながら、宅建の資格は必要ですし、専門的な知識があると有利になります。
3-2.他業種からの転職もある
不動産業界以外では、以下のような業種からマンションデベロッパーへの転職に成功した事例があります。
• 金融業界
• 広告業界
• 建築(ゼネコン)業界
どれも、マンションデベロッパーと関係が深い業種と言えます。
3-3.マンションデベロッパーへの転職を成功させる方法は?
マンションデベロッパーへの転職を成功させるには、どんな方法があるでしょうか?
正直に言うと、正攻法はありません。
宅建士の資格は最低限、必要になってくるでしょう。
そのうえで、以下のようなセールスポイントを持っていると有利になります。
• 語学力(英語、中国語)
• 営業力
• 広告、集客力
• 設計力、建築デザイン
大手マンションデベロッパーの中には、アジアを中心に海外事業を展開している企業も多いです。
新卒社員の語学力は必ずしも高くなく、「英語や中国語の能力」と「営業力」を組み合わせてアピールできれば、チャンスがあります。
その他、モデルルームへの集客には広告戦略も必要ですし、マンション開発に当たって高い設計能力を持った社員が求められる事情もあります。
この場合も、語学力をアピールすることで差別化できます。
いずれにしても、マンションデベロッパーがどのような仕事なのかを理解し、自分が入社後にどのように価値貢献できるかが明確にすることが重要となります。ヘッドハンティングされるようなアピールポイントがないと、難しいかもしれません。
3-4.中小のマンションデベロッパーへの転職は?
ここまでは、大手マンションデベロッパーへの転職が難しいという情報をまとめてきました。
それでは、中小のマンションデベロッパーの転職市場はどうでしょうか?
実は、転職難易度は低く、求人募集は多いです。
不動産業界は人材の流動性が高いと言われるのは、大手ではなく、中小企業なのです。
冒頭で紹介した「大京」「タカラレーベン」などは、中途採用も活発に行っていますので、チャンスがあります。
年収や待遇は、大手とは少し異なります。
平均的なサラリーマンの年収に近づき、インセンティブ報酬の割合が高まります。
また、マンション専業のデベロッパーは事業内容自体にリスクを持っており、将来性には注意が必要です。
少子高齢化、人工縮小の日本では、いずれ、住宅の供給過剰が問題になってくるでしょう。
大手であれば、都心の一等地で、もしくは地方の駅前プロジェクトなどで、今後もお客さんが買ってくれるマンションを開発することができるでしょう。
しかし、中小規模のデベロッパーでは、魅力的で競争力のある用地を仕入れることができません。
資金体力的に、どうしても地方でマンション開発をすることとなるため、マンションは完成しているのに完売にならず「赤字案件」となるケースも多いようです。
実際に、2015年には「サーパス」シリーズを手掛けた穴吹不動産という企業が経営破綻し、大京に吸収合併されています。
中小のマンションデベロッパーに転職するのは難しくありませんが、待遇や将来性の面で注意が必要です。
4.マンションデベロッパーの転職事情まとめ
今回は、マンションデベロッパーの転職事情について、体験談を交えながら解説してきました。
改めて、要点をまとめると以下の通り。
• マンションデベロッパーは人気の就職先
• 年収、待遇が良い「ホワイト企業」である
• 転職の難易度は高く、狭き門
• 語学力&「○○力」でアピールできる
• 中小マンションデベは転職できるが将来性に注意
マンションデベロッパーは、「地図に残る仕事」としてやりがいを感じながら働いている人が多い印象です。
待遇もよく、人気就職先ランキングの上位にランクインするのも納得。
新卒採用がメインで中途採用は狭き門ですが、可能性は0ではありません。
仕事内容をよく理解し、自分が入社後にどんな部門でどのように貢献できるのか、戦略を持って転職活動をすることで、チャンスが出てくることでしょう。