1.別業界から不動産業界への転職

筆者は、WEBのコンサルティング会社から不動産業界へ転職した経験があります。前職における具体的な業務内容は、営業(テレアポ営業も含む)で見込み客を新規開拓したり、WEBを用いた反響営業で見込み客を獲得する集客業務から、見込み客への提案からクロージングまでを行いました。加えて、獲得した案件に対して、実際にWEBのコンサルティングサービスを提供し、成果を出すという、コンサルティング業務も行っていました。よって、見込み客獲得からWEBコンサルティングまで一気通関で行ってきました。筆者の前職は、社員数10名以内の非常に小さな会社であった為、ある程度の規模を超えた組織に見られる、職務が分業されている状態ではなかったので、業務を幅広く行いました。その会社で6年の業務を経て、不動産業界に転職した私が考える、不動産業界に入って感じた事を、記事にします。

 

2.私が感じた不動産業界が得意としているところ

私が感じた不動産業界が得意としているなと感じた点は、何点かあります。まず、不動産と営業は切っても切れない関係にあると思いますが、営業という職種においては、何と言っても、地道な行動が多いと感じました。テレアポ営業や、飛び込み営業等、立て看板やチラシまきなど、、、とにかく、愚直に行動して取り組む意識が非常に強く、基本的には、行動量が成果に反映される傾向にあるなと感じました。

不動産投資は、一般的には、人生の中でもそう多くない、とても大きな買い物です。何かを購入する時に、論理的に商品のメリットを考えて購入したり、衝動買い的に、感情に任せて購入したり、日常の中で何度も購入という選択をすると思います。その中でも、不動産投資は非常に大きな買い物ですので、通常、衝動買いに至るケースが少ないです。

不動産の購入を検討する際に、大部分は論理的な説明を受けることにはなりますが、内容が複雑であったり、そもそも、最初から全てのリスクを把握しきる事が難しい場合もあります。論理も非常に重要ですが、最後は感覚に頼って意思決定をする要素も大きいです。そんな時に、担当の営業に対して、「あなたがそういうなら、購入する」とお客様に思ってもらう事がとても重要だと感じました。それは、人間力が非常に試される領域であり、商品が魅了的というのは前提にあるものの、なによりも、自分を売り込む力が問われます。


よって、不動産業界で活躍できる営業は、他の業界でも通用する、再現性の高い営業力が身につくと感じました。
他業界から不動産営業の領域へ足を踏み入れたいという人は、良いチャレンジになると思います。


また、商品が不動産ということもあるので、経済等のマクロ情報に詳しくなるというのも、もう一つの大きな利点です。不動産の価格は、経済状況の影響を受けやすいという特徴があります。よって、社会の情勢が今、どうっており、今後、不動産の価格、需要は見込まれるのかという点を説明する事が大事になります。説明できたり、少なくとも、把握ができるようになる為には、マクロ情報についての把握が不可欠となりますので、必然的に知識が身につくことになります。

 

3.私が感じた不動産業界が不得意としているところ

不動産業界に転職して強く感じた事は、デジタル領域が非常に改善の余地のある領域だという点です。最初にまず、筆者がとても驚いたのは、名刺の交換にFAXを用いる事です。不動産業界には、他業種にいるとあまり見ないようなルールも見受けられました。一方、筆者が所属していたWEB業界では、特別な理由がない限り、極力WEB上で済ませるという意識が高かったので、より強く意識してしまったのかも知れません。


不動産業界では、そういった、本当は削減できはずの手続きというのが、多く隠れている印象があります。よって、筆者の働いたWEB業界の視点で考えると、大きなチャンスが不動産業界には隠れているなと思いました。

 

4.不動産業界でも他業界も共通だなと思ったスキル

 不動産業界にも当てはまる普遍的なスキルは、「PDCAスキル」です。
WEB業界では、良くも悪くも、全ての成果が可視化されます。どんな人がWEBサイトをみて、どれくらいWEBサイト上で行動して、最後に何を購入したのか?が全てデータで把握でき、ある程度の事象は論理的に説明できてしまいます。
よって、なぜ、こういった結果になったのか?次にどうするのか?というひたすら改善を積み重ねて、成果をあげていくPDCAを用いた仕事の進め方が非常に有効でした。


このスキルは非常に汎用性が聞きます。
営業活動でこのスキルを応用すると、「なぜ、この提案でお客様が動かなかったのか?」を検証して、改善していく事によって、次回のアクションと成果につなげる事ができます。また、検証を繰り返す事によって、「なぜ、自分が販売できたのか?」が明確になり、成果のでる行動パターンも明確になりますので、成果を出す行動を容易に積み重ねることができ、一定の成果を出し続けることができるでしょう。


このように、成果を出す為に、PDCAによって、再現性を保つスキルというのは、どの業界でも普遍的なスキルだと感じました。
また、Web業界では、3C分析(Customer, Competitor, Company)という分析方法を用いて、改善する為のアイデアを練りだしたりするのですが、その中でも、Customer(顧客)の求めているものを把握しにいく、いわゆるニーズを把握するというスキルは非常に重要であると感じたと同時に、不動産業界でもその重要性は当てはまると感じました。


企業活動において、最も重要なうちの活動の一つは、「お客様のニーズや課題を把握し」「それを解決すること」だと思います。お客様のニーズを把握する為に、お客様の立場になって、相手の思っていることを想像し、インタビューを行い、丁寧にお客様のニーズを掘り下げていきます。
また、筆者は前職で、法人営業を行っていました。法人営業では(個人でも同じですが)、最初のヒアリングが最も重要で、非常に注意深く顧客の話しに耳を傾けました。B to B (「ビジネス・トゥ・ビジネス」の略で法人営業)では、提案のクオリティは、「いかに、顧客の課題をヒアリングできているか」というのが重要になります。
不動産の営業でも、お客様の相手の思っていること想像して、ニーズや課題を把握し、それに対して商品を提案、販売をするというプロセスはまったく同じだと思います。よって、営業不動産業界においても同じように通用するスキルであると思います。 

 

5.別業界から不動産業界に転職する際に気を付けること

他業界から不動産業界に転職する際に注意するべきポイントは不動産業界特有の専門知識が必要な職種への転職です。
例えば、不動産営業では、お客様に商品を販売する、「販売営業」の職種もあれば、いかに良い商品(不動産)を仕入れてくるかが問われる、「仕入れ営業」という職種もあります。仕入れ営業では、過去の経験で自分が培ったスキルを活かそうとしても、不動産業界の経験がないと、知識や経験が不足して、活躍するのがとても難しいです。

 

6.不動産業界はチャンスの塊

WEB業界から不動産営業への転身した筆者の所感とすると、不動産業界は、ポテンシャルの高い市場だと感じました。市場規模は46兆5,363億円(2018年度)という大きな市場にも関わらず、大きな非効率が発生していると捉えているからです。しかし、今後は、多くの業務が効率化されたり、新しい仕組みが導入される兆しが少ずつ見え始めています。


※2020年6月19日に、政府は、民間企業や官民の取引の契約書で押印は必ずしも必要ないとの見解を初めて示しました。
他業界からの転職をした人は、新しい取り組みを不動産業界に取り入れて応用できるチャンスだと思いますし、営業や専門職の方は、効率化によって集中すべき業務に時間が使え、より専門性を発揮するチャンスではないかと捉えています。