約20年前に新人不動産営業マンとして仕事をしていた頃
今やアラフォー男となった私が恋愛について語るなど気持ちが悪い話だが、今日は恋愛と不動産営業の仕事の類似点について書いてみたいと思う。特に若い方や不動産業界初心者の方・未経験で不動産業界に転職をしてきた方には、ぜひ気持ち悪がらずに読んでいただきたい(笑)そして正直、不動産業界だけではなく、それ以外の業界で働く営業パーソンにも役立つのではないかと思っている。

私が20代の頃、ある都内の不動産会社(新築不動産マンションディベロッパー)で営業マンをやっていた際に、その会社でトップ営業マンだった人が直属の上司となった。その先輩社員が教えてくれたことが、不動産業界やその後の転職先での自分のビジネスマンとしてのパフォーマンスを大きく変えてくれたと思っており、特にその上司がよく言っていた「恋愛と不動産営業は同じだ!」という極論(笑)は今でも忘れない考え方である。

当時、新卒1年目で、その不動産会社が新卒採用を開始してからそんなに年数が経っていなかったこともあり、不動産営業の教育や研修に関しては部署ごとの上司に任されていた。そのため、部長や課長などの責任者クラスの役職者が、部下の教育に熱心な場合は、時間をとって営業研修などが行われていたが、私の上司はプレイングマネジャーということもあり、どちらかというと実践で学べ、というOJT方式の育成だった。

私は当時、つい数ヶ月前までは大学生をしていたような典型的新卒社員だったので、当たり前だが不動産営業の仕方など全く知らず、難しい不動産用語や法律がバンバン飛び交うような「オトナの不動産の世界」という大海で溺れるように必死に生きていた。

不動産の仕事で一番大変なのは、その複雑で幅広い業務を覚えることだろう。慣れてくればお手の物だが、覚えるまでは大変だ。私は運良く学生時代に宅地建物取引士(当時は宅地建物取引主任者と言った)の試験を受け、免許を取得できていたため、ある程度理解できることは多かった。しかし、これは不動産業界特有だが、一つ一つの物件の取引額が大きかったり、一つの開発プロジェクトが完成するまでの時間軸が長いことから、手触り感が無く、新人ながらモヤモヤしていた。

そんな手触り感が無かった時に、ビビビッと来て、腑に落ちたのがトップセールスだった上司に教えられた「恋愛と不動産営業は同じ」という言葉だった。簡単に言えば不動産営業を恋愛に例えて説明してくれたのだ。

研修や講習などは無い、日々の業務中にふと時間がある時に、雑談まじりで様々なことを教えてくれるそのトップ営業マン上司は、きっと私のような、ちょっと前まで大学生だった若者にできる限りわかりやすく、営業を教えてやりたかったのだろう。当時の私の目線に合わせて、難しい不動産営業と、思春期の若者なら誰もが体験する恋愛を、見事に繋ぎ合わせて説明し出したのである。

OJT型の教育をする上司を持ったことがある方なら共感していただけるかもしれないが、そういうタイプの上司は、なかなか説明が乱暴だ(笑)。なのでその時にトップ営業マンだった先輩の説明をいま私なりに丁寧に下記のような図にまとめてみた。

※ちなみに、おなじみ広辞苑には「恋愛とは = 男女が互いに相手を恋い慕うこと。またその感情。恋」と書かれているが、ここではわかりやすいように、男性が女性に出会い、お付き合いをすることをゴールにすることに対してフォーカスして書いてみたいと思う。当然女性のセールスウーマンの方でも理解できるし、仕事にも使えると思うのであしからず。
また不動産営業というのは、賃貸営業ではなく、今回は分譲マンションや戸建ての販売営業、売買仲介などのイメージを持って読んでみてほしい。

 


 

恋愛も不動産も、出会いにはチャネルと量が大切

 

上の図を見てほしい。大きな流れで言うと恋愛も不動産営業の仕事も同じで「初回接触→ヒアリング→アピール→成約」というプロセスとなっている。上のほうに書かれている赤い字の部分が恋愛で、下のほうに書かれている青い字の部分が不動産営業のことが書かれている。左側がスタート地点で徐々に右側に行くにつれゴールに向かうようなイメージだ。

恋愛も不動産営業もいちばん最初のスタートは「出会い」である。ここでは「初回接触」と仰々しく書いてあるが、要は最初の出会いがあるかどうかでスタート地点に立てるかどうかが決まる。

例えば、恋愛で言えば、学校や職場での出会いだったり、友人の紹介だったり、何かのコミュニティに参加することで最初の出会いのきっかけ作りができるだろう。私の友人(幼なじみの女性)がよく「女性メインの職場だから、出会いが全然無いんだよなぁ。転職しようかなぁ。。。」というふうに言ってくるので「転職だけじゃなくて、合コンでも、お見合いパーティーでも、婚活アプリでも全部利用しろ〜」と喝を飛ばしている(笑)やはり最初の出会いがないと始まらない。上記の右側のプロセスに進めない。そして出会った人全ての人が自分のタイプではないはずだから、できる限り多くの人に会えるよう努力しなくてはいけないわけだ。

これを不動産営業に置き換えてみよう。最初のお客様との接触の仕方は、様々な方法があるだろう。例えば反響営業や引き合い営業と言われる待ちのスタイルによる接触。具体的にはSUMMOやアットホームなどの大手不動産ポータルサイト経由で問い合わせを受けたり、Google・Facebook・Youtube・twitter経由などのSNS・インターネットで集客をするやり方だ。もっと昔ながらの方法で顧客接触をしている不動産会社もあるかもしれない。いわゆる源泉営業とか飛び込み営業と言われるようなもので、具体的には異業種交流会に参加して名刺交換をしたり、玄関をノックしたり、電話帳に片っ端から電話する営業スタイルだ。恋愛と同じように最初の接触がいかに多いかで次のプロセスに進むお客様の量も決まってしまう。そのため、様々なチャネルを利用して顧客とのファーストタッチを獲得しようとするのである。

 

最も大切なのは「ヒアリングの後に提案」。その逆は無い

初めて出会った異性の人をひと目見て気に入ったり、ちょっと話してみたら「この人と合うなぁ」と思ったことはないだろうか。そして、この人とお付き合いしたいなぁと思った時にどうするか。例えば2人きりのデートに誘ったり、食事に行ったりするのは一つのプロセスと言えるだろう。その誘いをするのに重要なのがヒアリングなのだ。

やってはいけないのが、最初から提案をしたり自分をアピールすること。まずはできる限り相手の好きなものや相手の興味が何なのかを聞くことに徹する(だんだんと恋愛講座みたいになってきた…笑)

なぜなら、例えばあなたが「辛くて美味しいキムチ鍋を出す韓国料理屋さん見つけたんだけど、今度2人で行かない?」と誘っても、もし相手が辛いものが嫌いな女性だったら断られてしまう可能性があるだろう。もしくは「オレ高いところの景色大好きなんだけど、渋谷スクランブルスクエアの展望台が評判良いらしいよ。今度一緒にどう?」と誘っても、相手が高所恐怖症だった場合は「SNSとかで見たけど、私ちょっと高いところ無理なの。高いところ好きなんだねぇ。私達、合わないね・・・」という展開になってしまうかもしれない。
ご自身の好みを変えるべきとか嘘をつくべきと言っているのではない。人と人との出会いの初期段階は相手と距離を縮めることが大切で、その後徐々にお互い合わないところや欠点も明らかにしていけば良い。お互いの共通点やニーズの合致があれば、マイナスになりそうな点も許容しやすいだろう。

相手は何が好きか・何に興味があるかを先に知っておくことで、良い提案ができる。例えば「A子さんって飲み物何が好きなの?」「私はワインが好きかなぁ」「僕もワインが好きだよ。今度美味しいオーガニックワインのレストランがあるから行かない?」「いいね!」という具合に、先に相手の好みやニーズがわかれば、その人に合った提案がしやすいのだ。

不動産営業の仕事に話を移してみよう。私が新卒で入った不動産会社のトップ営業マンの先輩が、口すっぱく言っていたのが「最も重要なのはヒアリング。そのヒアリングの後に提案しろ。その逆はダメ」ということ。ヒアリングを先にしてから、その後はじめて提案に入る。チームごとに教育制度や教育内容が異なるため、私の勤務先であった不動産会社の社内でも営業手法はバラバラであった。つまり「提案後にヒアリングする」というやり方のチームもあったのだ。例えば、別の部署や別の先輩が責任者をやっているマンションのモデルルームに行くと、最初にサンプル住戸を案内されたり、物件説明をされる、という具合だ。それに対してトップセールスの私の上司は、モデルルームにお客様が来ても絶対に説明や提案、案内をしない。顧客がまずモデルルームを見たいと言っても、最初にアンケートを書いてもらうのだ。そこで顧客ニーズを把握する。どんな購入検討理由なのか、好みの間取り・希望する設備仕様などは何かを認識することで、その後のモデルルーム案内時や接客時のトークも打ち出し方が変わってくるだろう。

 

後編に続く>>>

【後編】恋愛と不動産営業の仕事は同じという極論が、まんざら嘘でもないという話(渾身の説明付き)