未経験から不動産業界への転職、不動産業界からのステップアップ転職など、不動産業界に転職をご検討されている方が真っ先に考える資格といえば「宅地建物取引士(以下宅建)」ではないでしょうか。

宅建は不動産購入時に重要説明を行うために必ず必要な資格となり、宅建業を営む場合には5人に1人の割合で宅建士の設置義務があります。

そのため、福利厚生として宅建資格手当を出している企業も少なくなく、ある企業では宅建士には月30,000円、年間で36万円がもらえることもございます。

そもそも宅建は不動産営業に従事している人だけでなく、建築業や金融業、その他一般企業の総務・経理部など、様々な仕事で活用できる資格です。数ある国家資格の中でも、知名度が高く人気のある資格のひとつといっても過言ではないでしょう。

そんな宅建は、不動産業界はもちろん、その他の業界でも転職に有利に働くこともございます。

では具体的にどのような理由があって転職に有利になるのでしょうか。今回は、宅建を取得することによって転職に有利になる理由にフォーカスしてご紹介致します。


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不動産業界の転職で有利になるる宅建とはどんな資格か

そもそも宅建とはどのような資格なのでしょうか?そしてどうすれば取得できるのでしょうか?

まずは資格の概要を以下にまとめます。
 


「宅建」とは

不動産業界で働くと必ず一度は耳にする「宅建」。転職活動の面接時などに「宅建はお持ちですか?」と聞かれることもあります。

宅建士とは、正式名称を「宅地建物取引士」といい、宅地建物取引業法に基づいて定められている国家資格です。

以前は、「宅地建物取引主任者」という名称でしたが、法改正により、2015年4月より「宅地建物取引士」の名称に変わり、弁護士や税理士などのいわゆる士業のひとつに加わりました。

宅建士の仕事内容は、不動産の売買契約、賃貸契約、交換契約など代理、仲介をメインとした不動産取引に関する業務全般です。

後ほど説明しますが、これらの業務のうちに、重要事項説明などの独占業務が含まれます。

土地や建物などの不動産は取引で扱う際の金額が大きく、宅地建取引業法や民法、建築基準法など複数の法律が関係するため、一般の人では扱うのが難しいと考えられています。

そこで1958年(昭和33年)、当時の建設省(現国土交通省)が公正な取引が行われることを目的として、創設されたのが宅建士です。

宅地建物取引業法では、宅建士を交えずに不動産の売買・仲介などの取引を行うことを禁じており、不動産会社にとって実務上必須の存在です。

そのため、転職市場においても需要の高い資格とされています。
 

 

どうすれば宅建の取得ができるのか

宅建士の資格を取得するためには、毎年1回10月に実施される試験を受験し、合格する必要があります。
※2020年度より、コロナウイルスの感染拡大により10月の試験で応募者多数の場合は10月と12月の2回に分けて実施されることとなりました。

受験するうえでの条件はなく、年齢・性別・学歴・国籍を問わず誰でも受けることができ、毎年20万人前後の人が受験を申し込んでいる大変人気の高い資格です。

合格率は毎年15%前後で推移しており、合格点は相対評価のため試験の平均点に応じて変わりますが、過去10年間のデータでは、50点満点中31点~37点が合格のボーダーラインになっています。(年々合格の点数が上がっているというお話も…)


なお、合格しただけでは宅建士を名乗ることはできません。試験に合格した都道府県で資格登録を行い、宅地建物取引士証の交付を受けることで、初めて宅建士としての業務が行えるようになります。


宅建士になる!試験合格後の手続きと不動産業界への転職まで


 

独立開業も可能?

宅建の資格のみでは独立開業はできませんが、「宅地建物取引業免許」を取得すれば可能となります。宅地建物取引業免許は、申請手続きをすることで、国土交通大臣または都道府県知事から与えられます。

なお、申請には事務所の開設が要件の一つとなっています。

申請先は、「1つの都道府県内に事務所を持つ」場合は都道府県知事免許、「2つ以上の都道府県に事務所を持つ」場合は国土交通大臣免許になるので注意しましょう。

独立開業した場合、安定した収入の保証はなく、営業活動など自ら行っていく必要がありますが、自分の実績がすべて収入に反映されるため、実力次第では企業に所属するより高い収入を得ることが可能となります。


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不動産営業担当から独立するまでの、私のステップアップ過程を解説


 

宅建が不動産業界の転職で有利になる4つの理由

次に宅建士が転職で有利になる理由を4つご紹介します。

不動産業界への転職や不動産業界内でステップアップ転職をご検討されている方は是非ご覧下さいませ!
 


宅建が有利な理由①:宅建士しかできない独占業務がある

宅建士には3つの独占業務があり、いずれも不動産取引を行ううえで必須となる業務です。
 

【重要事項説明】
不動産売買、賃貸借に関する契約を締結する際、売主・貸主は契約に関する重要事項を、買主・借主に対し、契約締結前に説明する義務があります。 
取引の際の重要事項説明は、宅建士のみが行える業務です。

 

【重要事項説明書(35条書面)の記名・押印】
重要事項は説明書を作成する必要があります。宅建士は取引の際、重要事項説明書の内容を口頭で読み上げますが、説明書には担当した宅建士自身の記名・押印が必要です。

 

【契約書(37条書面)の記名・押印】
重要事項説明が済んだ後、売買・賃貸借の契約書を締結します。この際の契約書にも宅建士の記名・押印が必要です。
なお、契約書の交付自体は資格を所持していない一般の従事者でも行うことが可能です。


 

宅建が有利な理由②:5人に1人の割合で宅建士の設置義務がある

宅地建物取引業法では、宅建業者はひとつの事務所につき5人に1人の割合で宅建士を設置しなければならないと定めています。

もし定められた人数が足りなくなると、宅建業者は不動産取引を行うことができなくなってしまいます。

仮にまったく実務経験のない人であっても、資格さえ所持していれば必要人数にカウントされるため、特に資格保有者が少ない会社には重宝されます。

つまり宅建士は持っているだけで価値のある資格なのです。


 

宅建が有利な理由③:不動産の知識があることを証明できる

宅建士の資格を取得するためには、宅建試験に合格する必要があります。前項で説明した通り、宅建士は受験者のうちの上位15%前後のみが合格できる資格ですので、決して簡単な試験ではありません。

私の周りでも3年連続で落ちている人もいます。

宅建試験に出題される問題は幅広く、宅建業法、民法、法令上の制限などを隅々まで学ぶ必要があり、試験に合格するレベルであれば、不動産取引を行ううえでの一通りの知識は備わっているものと見なされます。

また、宅地建物取引士証の交付を受けるためには合格に加え、2年以上の実務経験か法定講習の受講が必要となりますので、実務経験または講習受講したことの証明にもなります。

仮に実務が未経験であっても、知識があることを証明できるのは大きな強みでしょう。


 

学習能力の高さを証明できる

宅建は試験範囲が広く、覚える内容がたくさんあります。合格するための学習時間は人ぞれぞれですが、おおむね500時間程度が必要であるといわれています。

試験も単純な暗記のみでは乗り切れない問題が出題され、特に民法の分野では深い思考力を要求されるケースが多いです。したがって、試験に合格したというだけでも、一定の学習能力があるという評価に繋がります。
 

 

余談:宅建は不動産業界以外でも活かせる!

余談にはなりますが、宅建士は不動産業界以外でも、様々な業種で活かせる資格です。

たとえば建設業界では、建築工事の請け負いだけではなく、完成した物件(住宅やマンションなど)の販売まで行う会社もあります。物件を販売する際は、不動産取引の独占業務を持つ宅建士の免許が必要なため、資格を活かせる場合が多いです。

また金融業でも宅建士の資格を活かせるケースがあります。

例をあげると、銀行が融資業務を行う場合、不動産を担保とするときがありますが、その際、不動産の価値を把握するための知識がなければ、融資の判断が難しくなります。

こういった場合に、宅建士の知識が重宝されるのです。

最近では、不動産担保ローン、住宅ローンなどを取り扱う金融機関も多く、金融業と不動産の知識は切っても切り離せない状態となっており、営業所ごとに宅建士を配置している金融期間も増えています。

 

まとめ

以上のように、宅建士の資格を所持していれば、不動産会社においては持っているだけで評価されるうえ、知識や経験のアピールもできます。

私も様々な不動産会社の方とお話する機会がありますが、「営業経験なくてもいいから宅建士が欲しい」という声や、「不動産営業歴3年以上かつ宅建は持っていてほしいな」という声が上がっております。

理由としては、宅建を持っていないと自分がお申込みを獲得したお客様を自分で契約することができず、別の宅建を持っているスタッフにお願いすることになります。自分のお客様なのに自分で最後までできないのです。

その分宅建を持っている人の仕事量は増えてしまいますし、自分自身も自分のお客様なのに最後まで対応ができない悔しさが出てくるでしょう。

前提として資格さえ所持していれば転職できるというわけではなく、経歴や人柄なども転職するのに重要な要素ではありますが、大きな武器となるのは間違いありません。

これから宅建士の資格を取得し、転職を考えている人は資格の強みを理解したうえで勉強に励みましょう。


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